あたまの中身は線路だらけ

ダイヤ論、配線論など鉄道に関する話題を語ります。鉄道車両のサイドビューを模した色々使える小さな画像「TrainChip」の公開も。

【TrainChip】小田急1500形(1000形ワイドドア車)

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ほかの車両 参考資料 pixiv

通勤ラッシュ時の遅延対策で誕生した、1000形系列の異端児

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一般的には1000形のワイドドア仕様車として知られている。
正式な形式は1500形(1000形が形式区分で1400番台まで使用しているため)。

登場したのは、今から27年前の1990年。
当時は複々線代々木上原から東北沢までとたった1駅ぶんしかなく(喜多見‐和泉多摩川間は工事中、梅ヶ丘‐喜多見間は都市計画決定もまだ)、朝の通勤ラッシュがまさに地獄だった時代。
この頃は朝早い時間に新宿を出るロマンスカーに乗ると多摩川を渡る前に必ず2、3度は一時停止にノロノロ運転を余儀なくされた。それほど列車は線路に満杯の状況だったのだ。

そういう状況下でいちばん気を揉んでいたのは乗降時間。
ほぼ全区間にわたってすし詰め状態なので、途中駅でドアを開こうものなら中からドッと乗客たちがあふれ出す。
そして降りる人が済んだら、いったん外に出された人も含めてとても収まりきらなさそうな数の乗客を無理やり押し込むようにしてふたたびドアを閉める。
こんな状態だから乗客の乗り降りにかなり長く時間が掛かり、とても定時輸送なんかできる状態じゃなかった。

この悩みは同業他社でもおなじことらしく、当時なんとかして乗降による遅延をなくそうと各社が様々なテスト車両を投入してきた。
大半はJR山手線などの6扉車のようにドアの個所を増やして乗客を捌く方法をとっていたが、小田急は当時各駅で整列乗車を呼び掛けていたこともあり、混乱を避けるためにドアの数はそのままで開口幅を広げることで多扉車とほぼ同等の開口スペースを確保しようとした。

そのため、1500形の客用ドア開口幅は運転台直後の両側4か所を除いて2000mmという例をみない広幅になった(前出の4か所は1500mm、通常は両開きなら1300mm)。

結果は幅よりも数だった。

しかし結果は芳しくなかった。

ドア位置を大きく変えなかったことで整列乗車でのトラブルこそ起こらなかったものの、ドアの幅を広げて乗降がスムーズになった引き換えに開閉にかかる時間も延びてしまったため結局大きな時短にはならなかった。おまけにドア開口幅を広げたぶん車内の座席スペースが犠牲になってしまい「座れない電車」と揶揄されてラッシュ時以外では敬遠されてしまうようになった。
さらに運の悪いことには、一部の車両では自動座席収納機構が導入されてラッシュ時には椅子なしで走ったのだがこれも利用客には不評だった。しかもその中には先頭車両もあったことで、乗客の座れないことに対する不満の矛先が椅子に着席して運転する運転士に向けられてしまうという、笑い話みたいだけどどうにも笑えないこぼれ話まで出てきてしまった。

一方、多扉化で対応したグループはそれなりの結果を収め、ホームドアの本格的導入が始まる2000年代後半までこちらの対応方法が主流となった。

結局ワイドドア作戦は大成功とはならず、こののち1995年に登場した2000形では乗降時間短縮と座席スペース確保の両立へむけて、ドアの開口幅は1600mmに抑えられた。
のちに1500形もそれに合わせて開口幅を1600mmに抑える改造が施される(ただし外見は変わらず)。

2000年代に入るとほかの通勤車同様にパンタグラフシングルアーム形に取り換えられた。
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※4両編成はパンタ換装の例があったかどうか不明(後述の6連化と時期が被っているため)

異端児は最後まで異端児のまま去っていくのか

2004年、4連がすべて6連化されることになった。
というのも、複々線化の進行でスピードアップが実現すると新宿口の各停はゴーストップの時短効果を最大限に引き出すべくより高い加減速性能が求められるようになるのだが、扉幅が広くて構造的強度に難がある1500形はそれに対応できず、高加減速を求められない一方で6連が求められていた急行運用や相模大野以遠の各停運用に回ることになったからだ。
結局、その異端児ぶりが仇となってしまった格好だった。
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工事は4連1編成を2両ずつに分け、それぞれ別の4連に組み込むという方法で行われた。
編成内の組み方は新製6連に基づくかたちになったが、中間化改造した元先頭車は新製6連のものとは異なる見付けになったほか運転室の向きにより2つの形態を持つことになった。

2016年からベースの1000形は車体更新工事が始まったが、1500形はその構造ゆえか更新対象にはならず、いずれはそのまま引退する運命であることを示唆された。

彼らが走る姿を、いつまで見ることができるだろうか。


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小田急通勤型電車のあゆみ (キャンブックス)

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小田急電鉄の車両 JTBキャンブックス

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